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北岳を舞台にテロリストとの死闘――樋口明雄「ブロッケンの悪魔 南アルプス山岳救助隊K-9」 

カテゴリ:本の紹介

読みました。

「ブロッケンの悪魔 南アルプス山岳救助隊K-9」(樋口明雄著、角川春樹事務所刊)

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シリーズ3作目ですが、山岳救助が主体のこれまでのお話と打って変わってハードなテロリストとの戦い。山岳冒険小説といった趣です。

広河原につながる北沢峠、夜叉神峠、奈良田からの三つの林道がそれぞれ何者かによって爆破され、北岳周辺が孤立。折から台風接近中でヘリも飛ばせません。

北岳山荘に従業員を人質にして立てこもったテロリストたち。化学兵器VXガスを搭載したミサイルによる首都圏への攻撃を材料に、ある要求を政府に突きつけます。

安保法制(戦争法)成立でテロの危険が増した日本。でもテロリストはアルカイダでもISでもなく、現役・予備役の自衛隊員たちでした。

93年のPKOカンボジア派遣と11年の福島原発事故で仲間が殉職した事実が秘匿され闇から闇に葬られたことに怒り、その事実の公表を求めて決起したのでした。

政府は自衛隊の初の治安出動を決めます。

アメリカの顔色ばかり見て安保法制を強行した張本人である「田辺首相」は自己保身しか考えない木偶の坊。

首相を痛烈に批判する伊庭内閣危機管理監は、もっと人命を考えない冷血漢で、人質を見捨ててもテロリストを殲滅すべしと主張。

現場(広河原)から記者が送った記事は特定秘密保護法の壁(と政権に癒着した上からの圧力)で陽の目を見ません。

出動したオスプレイは追い風に煽られセットリング・ウイズ・パワー現象(ボルテックス・リング・ステート)で揚力を失い不安定な飛行を余儀なくされます(自衛隊にオスプレイが配備されたあとの設定なので、これは近未来ということになるのでしょうか)。

主人公であるはずの山岳救助隊員たち(白根御池小屋常駐)は、相手が武装集団だということで待機を命じられ、なすすべもないのですが、最後の最後で目を見張る大活躍(やっぱりね)。

一番の大奮闘は何といっても北岳山荘スタッフの「松戸くん」。テロリストたちの目をかいくぐって情報を下界に送ります。

松戸は何度も銃撃を受けながら死なない(!)。背中に数発の弾がめり込んでもまだ生きている(しかも動いて活躍する)って一体…。

小さな嘘(北岳に山岳救助犬を配備した救助隊が常駐という設定とか)が気になってしまう私ですが、こういう大きなフィクションの前にはそれもいつしか気にならなくなっていました。

手に汗を握るスリリングなお話。久々に電車を乗りすごしてしまいました。

(はせ)
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