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アラフォー女子が北アルプスを単独行。山の話のようでいて、人と人とのかかわりの話でもあります――北村薫著「八月の六日間」 

カテゴリ:本の紹介

「八月の六日間」(北村薫著、角川書店刊)

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山女子小説、と銘打って宣伝してた本。読んでみました。

主人公は出版社勤務の40歳。

山に足を踏み入れる動機、山にのめり込んで行くきっかけというのは人それぞれですが、この主人公の場合、「明日。山、行きませんか」と同僚から誘われた一言。中央線沿線の滝子山。迷い込んだ沢筋で見た紅葉の美しさにすっかり魅入られてしまったのでした。

奥多摩などでステップアップを重ねること3年。

9月の北アルプス表銀座・槍ヶ岳、2月の裏磐梯の雪山入門・スノーシューツアー、10月の北アルプス蝶・常念・燕縦走、5月の北八ツ、8月の雲の平――と挑戦していきます。

ツアー以外は単独行です(すごい)。

小、中、高と一緒だった親友の死、5年前まで一緒に暮らしていた男(カメラマンの原田)との確執。雑誌編集の仕事を通しての人間関係。

それらに加え、山での人との出会い。

山の話のようでいて、人と人との関係を描いた小説でもあります。

活字中毒の主人公。どれにしようか迷いながら山に持っていく本が毎回多彩です。それにしても文庫本3冊を行き帰りの電車で読んでしまうとは!

この本、いろんな楽しみ方ができそうです。主人公の歩いた山をなぞってみる(安易にそれをやるな、と巻末に注意書きがあります)。たくさん書名が出てくる本を読んでみる。

そして、ミステリーとしての要素も楽しめます。え、どこが?と言われそうですが、例えば「あずさ2号」の歌詞の謎。街で通りすがりに聞いたカップルの女性の言葉の謎…。

山の描写も楽しめます。

「私の抱いていた山のイメージは、蝉や鳥の声を聞きながら森の中を歩く――というものだった。しかし、北アルプスの尾根は全く違う。音のない中、世界の塀の上を歩くようだ」

なるほど、森林限界から上の世界をそう表現するのですね。

作者は山には登らないそうですが、臨場感ある描写が随所に。まったく小説家というのは、見てきたような…。

でも、ちょっと不満も。8月の北アルプスを歩いていて、咲いている花の名前が出てこないのはいかがなものでしょう。

「点々と咲く白い花、群生する黄色の花々。風が渡り、それらを揺らす」

「白や紫の小さな花々が咲き乱れ、とても綺麗だ」


――などの描写はあるのですが。白い花、といってもチングルマなのか、ハクサンイチゲなのか、ゴゼンタチバナなのか、イワツメクサなのか、気になるところです。

主人公が花の名前に詳しくなくても、周りの登山者に語らせるとか、やりようはあると思うのですが。衒学的な作風の作者も高山植物の名までは手が回らなかったということでしょうか?

もし、続編があるのならば、南アルプスや奥秩父の渋いコースにも分け入ってもらいたいなぁ、と思いました。

と、ここまで書いてきて、

でもこの本はもっと深いことを書いているような気がするのです。しかもそれは人生の意味とか、生きるとは何かに関わった、大事なことのような気がします。

主人公が高校時代、演劇部の公演の審査中に居眠りしていた老審査員にただ一人抗議したときの、その老先生の表情。パラオで夭折した中島敦が息子に託したと思われるもの。親友が亡くなったときに自分が感じたこととその後思い直したこと――に関連した部分なのですが。

長くなりそうなのでその話はまた別の機会に。

(はせ)

↓「八月の六日間」公式サイト
http://www.kadokawa.co.jp/sp/2014/8gatu/

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