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世界のウエムラの冒険の意味――湯川豊「植村直己・夢の軌跡」 

カテゴリ:本の紹介

こんな本を読みました。

「植村直己・夢の軌跡」(湯川豊著、文藝春秋刊)

uemura


月刊『文藝春秋』の編集者だった著者。植村が世界放浪の旅を終えて帰国した1967年にインタビューをして知り合って以来、植村の冒険を公私にわたって支えてきた人です。

これは、その湯川氏が見た植村植村直己の人物像と冒険の軌跡をたどった本です。

しかし、植村の冒険については「青春を山に賭けて」「エベレストを越えて」「極北に駆ける」「北極圏1万2000キロの旅」など、本人自身の書いた本がたくさんあり、植村の死後も「植村直己の冒険学校」「植村直己と山で一泊」「植村直己・妻への手紙」などの本が出ており、今回の本もそこからの引用が多いです。

その意味では「屋上屋」「重箱の隅」的な感は否めないのですが、しかし植村の冒険の「ダイジェスト版」「総集編」として読むには手ごろかな、と思います。

それに、間近に植村に接してきた著者だけに、彼の人となりが、リアルに伝わってきます。たとえば、植村が並はずれたしゃべり下手だったこと。インタビューするのときも、一言二言話すのに大汗をかき、話の内容に行き着くのが大変だったのだそうです。

植村は有名になってから、冒険の資金稼ぎの必要もあって全国を講演をして回っていますが、それだけのしゃべり下手であれば、大勢の人の前で話す講演は、本人にとって大変なストレスだったろうな、と思います。

また妻公子さんに甘え頼る部分が多く、その表れとして逆に公子さんに対しては相当な怒りんぼだったようです。月に一度生理のように起こす癇癪は、かなり理不尽なもので、しかも2、3日経つと何事もなかったようにおさまり、逆に平謝りに謝る、といった風だったとか。外に対して「いい人」であることの反動もあったのでしょうか。

植村は実家について「貧農で、自分はそこの四男坊」とことさらに卑下することが多かったのだそうですが、事実は大違いで、割と豊かな農家で末っ子の甘えん坊として育ったのだそうです。著書はそれを「不要な卑下癖、謙遜癖」と言っています。

また「原稿を書くのが大嫌い」といいながら記録魔ともいえるほど膨大なメモを残しています。執筆嫌いも割り引いて考える必要があると著者。

植村直己の冒険家としての資質で重要なのは、環境への適応力です。高度に対する馴化能力もそうですが、「どこへ行ってもその土地のものがおいしく食べられるので、ありがたい」と本人が言うように、食べ物への適応力には目を見張るものがあります。

アマゾン川を筏で下ったときはバナナやマンジョーカ(タロイモ)、ピラニア、ナマズ。ネパールのシェルパ族の家で越冬したときはジャガイモと麦こがしのツァンパを混ぜ、それをヤクの乳で作ったバター(ギー)で焼いた「ロティ」というもの。

グリーンランドのシオラパルクでは、アザラシ、セイウチ、トナカイ、クジラなどの生肉。そして極め付けが、アパリアスという渡り鳥の、アザラシの皮下脂肪漬け「キビヤック」です。

著者はこう書いています。

植村は、アマゾンの先住民にも、ネパールのシェルパ族にも、極地のエスキモーにも、自分と同じ人間という、ごくあたりまえの感情をもちつづけた。それが彼の人間を見る目だった。

そういう感覚がベースにあるから、現地の人と同じものを食べられたのでしょうね。しかし、それにしても、生肉食も最初は戸惑ったけど一週間で慣れたというし、聞くだに恐ろしそうなキビヤックも大好物になったというから、やはりすごい。

南極大陸を犬ぞりで横断することが夢だった植村。そのためにイヌイットに犬ぞりの操縦を教わり、北極圏で実績を積みますが(それ自体が記録的な冒険でした)、いざ南極大陸へというときフォークランド紛争が起こり、結局果たせなかったのでした。

1984年2月にマッキンリー冬季単独登頂をなし遂げた後、下山中に消息を絶ち、行方不明に。享年43歳。

著者は植村の冒険の位置付けについて、以下のように書いています。

二十世紀に入って、世界の地理上の空白は北極と南極ぐらいしか残されていなかった。南極点に誰かが立ってしまえば、「初めて」の「初」は、もう残されていない。わずかに「単独であること」が「初」に結びつく。現代の探検家あるいは冒険家のやりにくさ、がそこにはっきり見えている。(中略)「初」がみな無くなれば、冒険のあり方が大きな方向転換を余儀なくされるだろう。植村直己は、ちょうどその転換点に立っていた男であるともいえる。

わたしは「青春を山に賭けて」は何度も読んだし「エベレストを越えて」も読んだのですが、そのほかの本は未読なので、ぜひ今度読んでみようと思います。

はせ

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