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大菩薩峠が登場する警察小説――「警官の血」 

カテゴリ:本の紹介

「警官の血」(上下)佐々木譲著、新潮文庫 各660円

佐々木譲の警察小説。親子孫と3代にわたる警察人生を描いた大河小説です。上下2巻の長尺ものですが、一気に読ませます。

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3代のうち息子の「民雄」が北大に警察のスパイとして送り込まれるのですが、ブントのシンパになりすまして過激派の動向を探るうち、69年11月の赤軍派の軍事訓練に参加することになります。

ここでこの本を取り上げたのは、その軍事訓練の舞台となった大菩薩峠が登場するからです(それだけで「山の本」というのは苦しいですか? 苦しいですよね、ハイ。すみません)。彼らが潜伏した山小屋「福ちゃん荘」は、作中では「花ちゃん荘」という名で出てきます。

赤軍派は「刃物、鉄パイプ爆弾、火炎瓶等の凶器で武装し、首相官邸などを襲撃し、人質をとって獄中の活動家らを奪還するという作戦を企て、そのための武装訓練を大菩薩峠周辺の山中で行うべく『福ちゃん荘』に潜伏していた」(ウィキペディア)のですが、11月5日の未明、山梨県警と警視庁に踏み込まれ、53人全員が逮捕されます。

その手引きをしたのが「民雄」だった――という部分がこの小説のフィクションなわけですね。なかなか臨場感のある描写で読ませます。

過激派(というか新左翼、偽左翼というか)についてはあまり興味がなかったので、私この事件については知らなかったのですが、作中の人物も言っているように、登山者も多く通る大菩薩峠周辺で武器の使用を伴う訓練をしようなんて、かなり無謀というか馬鹿げているというか。その後連合赤軍、日本赤軍と先鋭化し自滅していく彼らの末路を暗示しているようです。

「ベルリン飛行指令」「エトロフ発緊急電」「ストックホルムの密使」など史実とフィクションをない交ぜにして壮大な冒険小説を書いてきた佐々木譲の面目躍如という感じです。

ただ、山の中の情景描写自体は今ひとつな感じ。作者は実際に大菩薩峠周辺を歩いてこれを書いたかどうか…。

はせ
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