fc2ブログ

さすが小説家。山の魅力をうまく表現――唯川恵「バッグをザックに持ち替えて」 

カテゴリ:本の紹介

「バッグをザックに持ち替えて」(唯川恵著、光文社文庫)

バッグをザックに

唯川恵さんといえば都会的な恋愛小説の名手というイメージが強かったので(直木賞受賞作「肩ごしの恋人」は衝撃的でした)、田部井淳子さんの半生を描いた「淳子のてっぺん」を出したときにはびっくりしたものです。

しかし、この本を読んで納得。仲間と山岳会を作って山登りにのめり込んでいった自らの体験が背景にあったのですね。

きっかけは暑さに弱い愛犬のセントバーナード犬のために軽井沢に引っ越して、すぐ近くに浅間山があったこと。そしてその浅間山を舞台に小説を書こうと思い立ち実際に登ってみたことだそうです。

その後、涸沢、蓼科山、八ヶ岳・赤岳、谷川岳、北八ヶ岳・硫黄岳、天狗岳、富士山…と登り、

ついには淳子のてっぺんの取材も兼ねてエベレストの展望台カラ・パタールを目指します。

さすが小説家。山の楽しさ、魅力をうまく表現するなー。

山岳会のメンバー(編集者や同じ軽井沢在住の作家馳星周氏ら)との交友も楽しそう。

浅間山がホームマウンテンというのもうらやましい限り。

ま、私のホームマウンテン、丹沢・大山も捨てたもんじゃないですが。

(はせ)

スポンサーサイト




4年ぶりの再挑戦――北アルプス燕岳(2,763 m) 

カテゴリ:山行 北アルプス

丹沢とか大山とか、そういうんじゃなくて、こういうところに行きたいんだよねー、と長女が持ってきた山の雑誌には、日本アルプスの3000m級の山の上からの景色がどどーんと(どこの山だったか忘れましたが)。

うんうん、行きましょう、行きましょう(私)。

そうしましょう、そうしましょう(次女)。

ということで4年前に始まった娘2人との年に1度の日本アルプス行き。

2016年、燕岳

2017年、奥穂高岳

2018年、北岳

2019年、白馬岳

と登ってきて、

今年は〝原点〟に返って再び燕岳へ。

長女が仕事の都合で休みが取れず、私と次女の二人になったため、今まで行ったことのない山だと長女が悔しがるだろうということと、前回は終始雨にたたられ展望ゼロだったのでリベンジの意味も込めて。

9月3日はふもとの有明荘泊。

【4日】

朝、有明荘前を7時15分発で宿のマイクロバスで送ってもらい、中房温泉前の登山口へ。登山ポストに届けを入れて7時25分登山開始。

第一ベンチ、第二、第三、富士見ベンチと快調に登り、10時合戦小屋。ここに来たらやっぱりこれ!というわけでスイカを。

スイカ
↑合戦小屋の名物、スイカ。一切れ500円。

ナナカマド
↑ナナカマドの赤い実がきれいでした。葉っぱの紅葉はまだこれから。

登りはじめは木の間越しにのぞく日差しが暑いくらいで、こんなに晴れなくても…なんて言ってたのに、次第に曇ってきて、合戦小屋から上では雨が降ってきました。まあ、傘で足りるくらいでしたが。

燕山荘が見えた! と眺めると、けぶる雨と霧の中に屹立する姿はまるで天空の城みたい。

登山道脇に咲くタカネリンドウ、ウサギギク、ミヤマトリカブトなどの高山植物をめでつつ小屋の前へ。

荷物を置かずそのまま燕岳を目指します。岩場もあるので傘はやめてカッパを着込み、雨の中の稜線歩き。思えば4年前もこうでした。リベンジのはずが同じことの繰り返し…。
IMG_4081_20200909125919fe8.jpg
↑雨の中の登頂

でも燕岳のピークを踏んで戻ってくる行き帰りには雷鳥3羽との遭遇や高山植物の女王コマクサとの出会いもあり、決して繰り返しではないヨロコビがあったのでした。

燕山荘に戻ると12時25分。小屋は消毒、マスク、換気、定員を半分に…と精いっぱい対策してました。

今回、コロナが心配だったので当初テント泊を考えていたのですが、テント場も予約制なのに気づいた時にはもう予約で満杯にになっていて、小屋泊にしたのでした。人との接触は避けられないので、危険はゼロではないですが、これだけ対策すればまあ大丈夫かなと思えるくらい、燕山荘は頑張っている感じでした。

2階の個室風に仕切られた部屋に案内され荷を解くと、濡れたカッパや服を乾燥室のハンガーに吊るし、食堂へ。

私はカツカレー、娘はビーフシチュー。うまい!

いったん部屋に戻りごろんと横に。なるべく人との接触は避けたいところですが、ケーキやコーヒーやビールやワインやおでんやが置いてある喫茶室への思い断ち難く。再び階下へ。

喫茶室
↑喫茶室でワインとソーセージ、チーズケーキ

窓際の細長い喫茶室は頻繁に換気中。外を眺めながらウインナー5種盛りとチーズケーキをアテに赤ワインをデキャンタ(M)で。まったり。

外は次第に晴れてきて、夕飯の前に日の入りの夕焼けを見に外へ。燕も槍も富士山も見えていました。

夕焼け
↑夕焼け

夕飯は17時30分から。

赤沼オーナーの山の話とアルプホルンを聞き、20時30分消灯。

【5日】

日の出は5時18分だというので5時10分頃に外に出てみれば、たくさんの人がカメラやスマホを持って赤く染まった東の地平線をにらんでいました。

やがて太陽はゆっくりと顔を出します。

日の出
↑日の出

朝日に染まる、槍ヶ岳を始めとした西側の山々も美しく、至福のひととき。

朝食は5時半から。

昨日の夕飯も朝食も入れ替え無しの1回。つまり宿泊客は食堂にいる人たちで全部のはず。100人くらいはいたでしょうか。

「次」の看板は3回入れ替えの表示で用意してあったので、土日はざっと3倍の客が泊まるのかな。

ザックに荷物をまとめ、6時10分出発。昨日に続きもう一度燕岳方面へ。

よく晴れて展望もばっちりなので、昨日と打って変わって明るい気分。

燕岳は巻いて北燕岳へ。6時45分着。ここからは燕岳と槍ヶ岳が両方見渡せます。

北燕岳
↑左端が燕岳。右端が槍ヶ岳

コマクサ
↑稜線に咲くコマクサ。「高山植物の女王」の名にふさわしい風格です

引き返し、7時10分燕岳のピークをもう一度踏んで燕山荘方面に戻ります。槍、穂高、そして雲の平方面の展望が雄大です。裏銀座の山々もぜひ挑戦したいもの。来年はあっちにするか、と妄想が膨らみます。

7時55分、燕山荘を後に下山開始。

合戦小屋では今日もスイカを食べました。

たくさんの人が登ってくるので、しばしば道を譲ることに。登りよりも「すいすい感」がない感じ。

10時50分、中房温泉登山口着。

いやー、晴れて良かった。リベンジ、大成功でした。

(はせ)

【タイム】

20年9月3日(木)
家700—足柄PA—安曇野・蔦屋書店1140—蕎麦屋青崎、ちひろ美術館(休館)、田淵行男記念館—有明荘

9月4日(金)
中房温泉725—第一ベンチ755〜800—第二ベンチ820〜825—第三ベンチ855〜900—富士見ベンチ930〜935—合戦小屋1000〜1030—燕山荘1120〜1125—燕岳山頂1155〜1200—燕山荘1225

9月5日(土)
燕山荘610—北燕岳645〜655—燕岳710〜715—燕山荘740〜755—合戦小屋835〜850—富士見ベンチ915—第三ベンチ940—第二ベンチ1005—第一ベンチ1025—登山口1050

ワイン、日本酒、ビールでほろ酔い加減。肉もなべもうまい!――恒例いも煮会 

カテゴリ:里山ニテ

11月25日、高尾山のふもとの日影沢キャンプ場で恒例のいも煮会をやりました。穏やかに晴れた日で絶好のいも煮会日和。13人の参加で和やかに談笑。おおいに盛り上がりました。

いも煮会といいながら芋の入っていない鍋。ハーリーシェフ渾身の鮭と鶏団子入りのとてもおいしい鍋でした。バーベキューのほうも、分厚いビーフの丸焼き。ワイルドな焼肉でした。

周りの紅葉もいまが盛り。ワイン、日本酒、ビールでいい気持ちに出来上がりました。

はせ


いも煮1.png

いもに3人

いもにサラダ

いもにシュウマイ

いもになべの中身

残雪期の後立山連峰・白馬岳を舞台にした山岳冒険小説――馳星周「蒼き山嶺」 

カテゴリ:本の紹介

読みました。

「蒼き山嶺」(馳星周著、光文社刊)

aoki.jpg

馳星周の作品は読んだことがなかったのですが、山岳冒険小説を書いたというので読んでみました。

舞台は残雪期の後立山連峰・白馬岳周辺。元山岳救助隊の得丸志郎は大学山岳部時代の同期、池谷博史と山でばったり出会います。池谷は警視庁の公安警察官。今は見る影もなく中年太り。白馬岳に登るつもりといいますが、足取りも体力もおぼつかなそう。得丸がガイドをすることに。

行き合わせた単独行の若い女性と白馬鑓温泉に浸かったりして冒頭は湯ったりまったりした雰囲気。そこから一転きな臭い展開に…。

馳星周といえば都会を舞台に裏社会を描いたノワールな小説、というイメージだったので山を舞台にした話は意外でした。

著者インタビュー記事によると、馳さんは軽井沢に住んでいて、同じ軽井沢の住人唯川恵さんの夫が山屋なのでその手ほどきを受けて浅間山を手始めに山に登り始めハマったのだそう。それで山を舞台にした小説を書く気になったのだとか。

なるほど。都会派恋愛小説の旗手唯川恵が田部井淳子さんの半生を描いた「淳子のてっぺん」を書いたのも意外でしたが、夫氏が山屋だったのね。

積雪期の後立山連峰の景色などの描写はなかなか。行ってみたくなります。しかし、途中で先の展開がだいたい読めてきたのと、山での「偶然の出会い」が多すぎ。都合良すぎるだろー、と思わなくもなかったですね。

(はせ)

恋愛小説の旗手が描く田部井淳子さんの足跡――唯川恵「淳子のてっぺん」 

カテゴリ:本の紹介

読みました。

「淳子のてっぺん」(唯川恵著、幻冬舎刊)

28642217_1[1]

エベレスト(チョモランマ)に女性で初めて登頂した登山家、田部井淳子さん(16年10月死去)をモデルにした小説です。

一昨年燕岳に行ったときに麓の宿で信濃毎日新聞に連載中なのを目にして「え! 唯川恵が山を舞台にした小説を? しかも実在の人物をモデルに?」と新鮮な驚きを感じたのを覚えています。唯川恵といえば直木賞を受賞した「肩ごしの恋人」など都会的な恋愛小説を書く人というイメージだったので。

単行本になったら読もうと心待ちにしていたのですが、図書館派の私、図書館で順番が回ってくるのを待って、やっと読みました。

小説として、実際の事実と変えていると思われる部分もあって、あれ?と思うこともありましたが(幼馴染みの勇太、女子大で同期だった麗華など「都合のいい」登場人物は創作でしょうね)面白く読みました。

すさまじいのはアンナプルナ遠征での隊員同士のトラブルや確執。田部井さん本人が書いた「エベレストママさん」(のちに「頂上だよ、タベイさん」に改題し復刊)で読んではいましたが、いやはやすごい。

もう二度とあんな思いは、との気持ちを切り替えて、女性だけのエベレスト登攀に挑むのでした。

なぜエベレストに登れたのか。

鍛えられた登山技術や体力もさることながら、高度順化の能力が並外れているんでしょうね。植村直己などもそうですが。あと天候も含め、運なのかな。

なぜ山に登るのか。作者はその答えを淳子さんの夫(彼自身登山家ですが、家庭で淳子さんをサポート)に言わせています。

「なぜ生きるのかってことと同じだよ。なぜ生きるのかの答えを知るために、人は生きる。なぜ山に登るのかを知るために、山屋は登る」

なるほどー。

(はせ)